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気候変動対策は、21世紀版のオイル・ショック?(フィデリティ投信 重見吉徳氏)

最終更新 2021/10/27 12:00 FX 商品市況 フィデリティ 気候変動 ESG

円相場の下落が話題です。過去1ヵ月の間に、円は対米ドルで1ドル=109円台から114円台まで下落しました。ただし「円の独歩安」というよりも「エネルギー通貨高」であり、その裏側で、資源を持たない国の通貨(→円や欧州通貨)が弱くなっているように見えます。また、米ドルも同じ観点で堅調推移と言えます。

※為替市場の直近1カ月変動率(対米ドル)

それと同時に、米連邦準備制度理事会(FRB)がテーパリングに向かっているため、新興国通貨には引き続き売り圧力が生じており(≒ソフトなテーパー・タントラム/米ドルへの資本回帰が続いている)、外国為替市場は、資源通貨高とテーパー・タントラムの2層構造に見えます。

これらの結果として、通常なら「資源高とドル安が共存」しがちですが、現在は「資源高とドル高が共存」しています。ここでドル安も起きていれば、日本国内のガソリン価格やその他の1次産品の国内価格はさらに上昇していたと思われます。

中国の経済動向やGDP統計から「も」感じること

10月18日に公表された中国の7-9月期の実質GDP成長率は、前年同期比で+4.9%、前期比で+0.2%(→小数点2桁目の四捨五入次第で、年率+0.6~+1.0%程度)の低成長に留まりました。一方、名目GDP成長率は前年同期比で+9.8%でした。

※中国の実質GDP成長率(前年同期比)

前回の「なぜ資産運用にコーチングが必要なのかの冒頭でも少し触れましたが、改めて、「気候変動対策は供給ショック」であり、それは(緩やかですが、しばらくの間、影響が続く)スタグフレーションを招くように思えます。

過去になぞらえると、①新型コロナウイルス・パンデミックが「貨幣発行の無制限化」という意味で1971年8月のニクソン・ショック(=金とドルの兌換停止)に類似してインフレに火を付け、②(中国を含む)気候変動対策の本格化が「エネルギー資源の供給削減」という意味で1970年代の2度のオイル・ショックに類似して(賃金を含む)インフレと生産の停滞につながるように思えます。また、③『新冷戦』や、④格差是正の取り組みもインフレ圧力として加わるでしょう。

パンデミックは、ロックダウンによって多くの財やサービスの供給を止めた後に、景気=需要の回復に沿って、インフレ率が上昇し、生産はまだ停滞が続いているという状況です。それは「一時的であり、スタグフレーションではない」との論評が多いように思えます。

一方で、気候変動対策は、今後とも新興国を含む世界経済の所得の高まりによって総需要を減らすことは容易ではないと期待される中で、基礎的かつ支配的な生産要素であった特定の資源(=化石燃料)の供給を抑制するわけですから、別の代替的な生産要素や財・サービス全般の価格・生産コストの上昇が予見されます。

最終財・サービスに例えれば、「電車」と「地下鉄」という2つの交通手段のうち、国民の過半数で「明日から地下鉄は使わない」と決めた結果、輸送サービスの総供給(生産)は減り、「電車」への需要が高まります。しかしながら、電車の本数や路線を増やすには時間がかかるため、当座の間、電車を使う人を抑制するために運賃を引き上げるといった具合です。

気候変動対策は「一時的」ではない

中国経済の動向に沿った流れとしては中国が豪州からの石炭供給を止める(→背景には『新冷戦』があり、パンデミックがある)。すると、発電用の一般炭や、製鋼のための原料炭が不足して、石炭価格が上がる。かたや、温暖化対策や冬季オリンピック・パラリンピック開催の名目で石炭による発電を減らしたり、製造業の工場稼働を落としたりする(→背景には民間企業の利潤優先や格差拡大に対する不満とそれらの抑制や、国家威信の対外誇示がある)。石炭の代わりに二酸化炭素の排出が少ない天然ガスにシフトして天然ガス価格が上がる。天然ガス価格が上がると、代替エネルギーとしての原油価格も上がる(→中国は9月に原油の国家備蓄を始めて放出しました)。電力価格が上がり、電力生産が滞って、アルミ・亜鉛・銅などの価格が上がり、それらの生産も減る。合わせて、原料炭の不足や価格の上昇で鉄鋼の生産も減るという具合です。

確かに、これまでの中国は、過剰な生産能力を抱えており、これが解消されることはよいことかもしれませんが、供給が減れば、価格は上向きます。そして、国際商品市場や外国為替市場を通じて、資源を持たない国である日本にも影響を与えます。

合わせて、グローバルには、今後、再生可能エネルギーや燃料電池への移行によって用途が拡大する銅の価格が上昇することが見込まれます。また、資源企業への資本供給は抑制され、設備投資は拡大せず、(代替されるまで必要な)化石燃料の生産コストは上昇すると見られます。

※米国:原油価格および掘削リグ稼働数

気候変動対策は自発的に供給制約を設ける取り組みであり、供給制約はインフレを生みます。「インフレは一時的」という話がありますが、気候変動対策は一時的なものではないでしょう。

株式とコモディティの分散ポートフォリオを

パンデミックの発生以降、強調していますように、引き続き、(リートを含む)グローバル株式と現物コモディティへの分散投資がポートフォリオの中核であり、現在は「ナチュラル・ショート/アンダーウェイト」になっているバリュー・セクター(→資源や素材など)の配分を増やすことがよいと思われます(→ただし、資源のない国である日本株式については、全く異なる投資戦略・銘柄選択の基準が必要になります)。

確かに、株式は、インフレやスタグフレーションの局面では「絶好調」とは言えません。しかしながら、流動性やボラティリティを考えると、コモディティに多くの配分をすることは困難であり、株式へのウェイトを高めに維持することが標準的なポートフォリオの構成でしょう。

シンプルに考えれば、①製造業を中心に多くの企業は実物資産を保有しているためにインフレに合わせて保有資産の名目価格は上昇しますし、②無形資産に依存するテクノロジー企業も一般物価の上昇に合わせて、自社のサービス価格を引き上げることができます。株式は「貨幣からの逃避」という長期テーマにとっての大きな受け皿です。

また、人間は日々学んで賢くなる存在であり、コモディティを「踏み台」にしてビジネスを行う存在です。コモディティと人間の知恵はインプットであり、ビジネスがアウトプットです。したがって、株式の(ボラティリティ調整後の)長期リターンは、コモディティのそれよりも高くなると期待されます。

 


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著者名

フィデリティ投信 重見吉徳


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